第1章 ジャズの大海原に飛び込んで

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「ああ、なるほど。車の運転手がご親戚だとか習い事の先生だとか、その子どもさんのお知り合いのかたならいいですね」 「だったらいいんですけどね、習い事にも塾にも通ってないらしいんです。家族構成のことも、母子家庭としか聞いてなくて、前任の先生も転勤されてしまって話をうかがえないし、その子本人とはどうにも意思疎通が難しいし、とにかく動いてみるしかないんです」  心配が、単なる考えすぎや思い過ごしだったら、それで全然かまわない。だけど、こんなに不安なのにそのままほっとけるかっていうと、わたしの性格上、絶対に無理。  お節介なのはわかってる。余計なお世話かもしれない。とはいえ、こんなんじゃなきゃ、小学校の先生なんて職業は務まらない。  教え子の名前は、上條(かみじょう)らみちゃんという。わたしが受け持つ4年2組の中で、いちばん難しい子だ。難しいってのは、大人の都合な言い方なんだけど、扱い方とか付き合い方とかが難しいって意味で。  まず、集中力の配分がちょっとほかの子と違う。テストの点数は全部抜群にいいんだけど、その授業態度でどうして、と不思議になることもあったりする。ちっとも話を聞いてくれないときと、凄まじく集中するときのムラがすごい。     
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