第1章 ジャズの大海原に飛び込んで

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 さっき、らみちゃんが例の車に乗り込むとき、決してイヤイヤな感じではなかった。でも、らみちゃんは、普段からあまりにも人懐っこい。警戒心がまったくないって言ってもいい。だから不安なんだ。知らない人にも無邪気についていっちゃいそうで。  らみちゃんを連れ出した男の人、チラッと見た。30代だと思うけど、ブラウンに染めた髪が少し長めのイケメンだった。何だこの芸能人まがいの男は、みたいな。間違っても、普通の公務員やサラリーマンじゃなかった。何かこう、オーラが違った。  イケメンだったんだよなあ。らみちゃんだって整った顔してるんだけど、小柄なかわいい系であって、さっきのイケメンとは似てるように感じなかった。車から身を乗り出してるとこを見ただけだけど、それでも背が高いってわかったし。手、おっきかったし。  って、その人がイケメンだろうが何だろうが、どうでもよくて。問題は、なぜ小学生の女の子を、まもなく暗くなろうって時間帯に、大人が飲みに繰り出す繁華街に連れ出すのかって点だ。ちなみに、今日は火曜日。バーの看板を見たい曜日とも言えない。  イカガワシイ系の何かだったらどうしよう? だって、らみちゃん、子どもらしくてかわいいし。でも、あのイケメンがイカガワシイ人とか、信じたくないんですけど。 「お客さん、前の車、停まりますよ」  運転手さんに言われて、ハッとして身を乗り出す。うん、前の車、路肩に停まるべくウィンカー出してる。     
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