第1章 ジャズの大海原に飛び込んで

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 勝手にイメージしてたとおり、ライヴハウスの中は薄暗かった。階段を下りて扉を押して入店しようとしたら、すぐのところにチケットカウンターがあって、そこで当日券を購入するシステムだった。ワンドリンク付きで4500円。高いんだろうか、安いんだろうか。  お店の広さは、小学生用のバスケットコートってところ。天井は案外高い。壁という壁には、有名ミュージシャンをとらえたものとおぼしき白黒写真が貼ってある。  赤い革張りのソファや椅子、給食のお盆くらいの狭いテーブルが、ちょっと窮屈なくらいの間隔で並んでいる。席は、すでに前のほうから8割方、埋まっているようだった。 「お席にご案内します。こちらへ」  慇懃無礼を絵に描いたような蝶ネクタイのウェイターさんが、わたしに声をかけた。 「人を探してるんです。ちょっとうろうろしていいですか?」 「まずお席にお着きください。ご案内いたします」  融通の利かん人だな。前のほうから行儀よく席が埋まってると思ったら、この人の指示があったわけか。ライヴハウスって、聴いた話によると、もっと無秩序な感じなんじゃないの? このお店は妙に厳しいしきたりがあるってこと? 老舗って聞いたし。     
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