第1章 ジャズの大海原に飛び込んで

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 でも、わたしは別にライヴを聴きに来たわけじゃなくて、らみちゃんを追い掛けてきたんだ。探させてもらわなきゃ困る。若いくせに頭の固そうなこのウェイターさんに、何て説明したらいいんだろう?  と、わたしがちょっと悩んだ瞬間。 「あっ! 先生だー!」  元気な女の子の声が、くすんだ音色のBGMの中に響き渡った。談笑していた人々が、ざわめきを止めて注目する。  ステージの目の前のテーブルのそばで、らみちゃんがピョンピョン弾んで、わたしに手を振った。ウェイターさんが、急に表情を和らげた。 「なるほど、らみちゃんのお知り合いですか。どうぞ、前のほうへ。椅子をもう1つお持ちします」 「あ、ありがとうございます」 「ご案内します」  と、申し出てはもらったものの、らみちゃんがわたしのところまで飛んでくるほうが早かった。肩に届くか届かないかの長さの髪が、うらやましいほどサラサラ弾む。 「わーい、ほんとに先生だ! あのね、今日、すごいんだよ。いっぱい音が聴けるんだよ! でね、ジュースおいしいんだよ。それでね、ライリが英語しゃべるの!」 「ら、らみちゃん、ちょっと待って? 順番に話してくれる?」  とはいえ、らみちゃんがいきなり筋道立てた説明なんか始めたら、むしろ怖いけど。案の定、らみちゃんはわたしの言葉に応えず、わたしの腰に抱き付きながら、ウェイターさんを満面の笑みで見上げた。     
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