光る人魚

　学会発表の夜、私は小田さんと飲みに行った。小田さんから誘われたのだ。
　「あの中身のない成果をあそこまで学会論文に仕立て上げるというのはすごい才能だ」と、まず私のあるのかないのかわからない才能を褒めてくれた。そして、その後の顛末を語ってくれた。
　「始末書を何枚も書いたよ」と小田さんは笑いながら言った。
　「暗視カメラシステムが壊れたことにしたんだ。実際壊したんだけど。ま、始末書書くの俺得意だから」
　小田さんが笑う。イケメンだ。
　「それから、操縦士な。操縦士の彼。口留め料は結構高かった。追加調査の発注。彼を指名した。また彼に操縦してもらうことにしたんだ。今度はジョンからお呼びがかかってね。グリーンランド海アゲイン。今年の秋。一緒に行くか？」
　よかった。小田さん、クビにならなくて。
　「はははは。次回成果が出なかったらクビ確実。そしたらノルウェー行って小料理屋でもやるかな」
　小田さん、お料理上手なんですか？
　「ばか。俺が上手い訳ないだろう。上手いのは操縦士。元コックだったんだって」
　よかった。操縦士さんも元気なんだ。

　青い光。
　呼んでいる。
　私は今年もグリーンランド海へ行くだろう。小田さんと、ジョンと、操縦士さんと。成果の出ない研究をしに。人魚の自己主張を知るために。

END

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10月1日
米国眼科学会「ブルーライトで視力は低下しない。PC用メガネも推奨しない」