光る人魚

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 人魚。未確認生物。UMAの1つ。最も有名なUMAと言ってもいいかも知れない。ジュゴンやリュウグウノツカイなどが見間違われたのではないかというふうによく言われる。しかし、それとは違う。人魚の目撃談や化石の発見は100年以上前からあった。船乗りに言わせれば、海に人魚という先住民が住んでいるのは常識とも言え、それ故に彼らはその昔から人魚に敬意を払って来た。あからさまに姿を見せる訳ではなかったが、海の中には確実に彼らが暮らしており、そしてそれを前提とした上で船乗りは海に敬意を払ってきたのである。  ところが、ここ最近その様相が変わってきた。2009年頃からイスラエルに面した地中海で人魚の目撃情報が相次いだ。余りに目撃談が後を絶たないため、人魚の証拠に対して懸賞金が懸けられたくらいである。そして2013年。遂に決定的な証拠が示される。ここグリーンランド海で生物学者の乗った潜航艇が人魚と遭遇。その動画が世界中に公開され、衝撃をもたらしたのだ。はっきりと水掻きがある五本指。海中から現れ、潜航艇の窓を叩く。船内にもその振動が伝わる。そして次の瞬間、その向こうに人間のような顔が船内を覗く。この動画は公開後すぐにフェイクだとグリーンランド当局から発表された。  しかしあれはフェイクじゃない。CGでは、潜航艇の窓から見える海中を泳ぐ生物と、その接触によってもたらされる潜航艇内の振動、そして乗組員である生物学者の動きまで完全に同期させて作り込むことはできない。そう。そうなのだ。遂にこの瞬間が来たのだ。世紀の瞬間。これまで伝説でしかなかった人魚が、人類の前にその姿を現したのだ。歴史的瞬間である。勿論そんなことは、例えそれが事実であったとしても当局は隠し通す。地球上に育まれている文明は人類文明だけではなかった。海底深くに別の文明があった。海の中でも暮らせる、人類に似て非なる生物による、人類とは別の文明。人魚文明。そんなものが明るみに出たら大変なことになる。パニックは避けられないだろう。だから当局はYoutubeで公開された動画をフェイクだということにし、生物学者の口を塞いだ。無かったことにしたのである。
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