プロローグ

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 婚姻と家族制度は崩壊し、支配層のみが人工授精により後継者を持てるものとなった。優秀な遺伝子は高値で売買され、またクローン技術による子孫の生産も盛んになった。それは支配層の中だけの話であり、放置された管理区域では人口調整のため、子を持つ事は禁止されているのである。しかし密かに子供を産む例は後を絶たず、生まれた子供達は未登録のためLTが無い。その人々は「ネームレス」と呼ばれ貧民街に溢れた。  言語は英語が世界共通語となり、各国の母国語の使用は禁止された。依然テレビ、インターネットが情報媒体であるが、それらは全て英語で配信されている。新聞という物は廃れて消えていた。英語以外の書籍の発行、情報の配信は厳しく禁止されたが、それでも母国語は代々伝えられている現状があり、完全な廃絶にはまだ期間を要すると見られている。  そして全ての宗教は廃止された。 『神は他にあらず。それは人類の創造主ネフィリムのみである』という教えのもと、ネフィリム信仰を唯一強制された。その化身とされるヘビは崇められる存在となっている。ここに至るまで支配層が煽り立てて出資した宗教戦争は実に60年間も続き、それは人口削減の一役を担った。  支配層達が何世代にも渡り長い年月を掛けて目指した超管理社会、新世界秩序。それが可能な人口調整は整った。これはそんな世界での、ある少女の物語である。
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