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1・コウガの暮らし
ジャパンCA。かつて日本と呼ばれた世界有数の先進国。首都は東京。60数年前の地震兵器での壊滅的大打撃により現在東京は機能していない。工業大国であったがその豊かな自然と良質の水が利用され、農業区域として運営されていた。また海洋管理区域として漁業も盛んであった。
ジャパンCAでの支配層が居住している本部はナゴヤ地区。ここ以外は全て農水産業区域とされた。良質の野菜や果物が栽培され、中央本部管理のもと各CAの指令部に輸出されていた。
オーサカ地区。繁華街跡地はスラムと化し無法地帯となっている。数々の大地震でも残ったビルなどの高層建築物はマフィアの巣窟であり一般市民は近付く事は出来ない程だった。
この郊外の廃墟のマンション群が残る住宅地に一人のアジア系青年コウガが暮らしていた。年齢は推定18歳辺り。誕生日は知らない。家族は分からない。誰から生まれて、なぜここにいるのかも知らない。そんな事はここでは当然だった。コウガも未登録市民「ネームレス」の一人だったからだ。
「コウガ、畑に行くぞ」
と声を掛けたのはニック。ネームレス仲間で赤毛の北欧系青年。年はコウガと同じ位だと思っている。ネームレス達はその呼称の通り正式名が無い。物心が付いた時にはそうに呼ばれていた。だから名字もない。コウガとニックと言う名前だけだ。
「今行くよ」
と荷物を背負って出て来たコウガ。ボロボロの繋ぎの作業着。シェルターで貰ったものだ。
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