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あの悪夢の日から7年後の昭和最後の年となった昭和63年12月2日、真冬の昼下がり….。
前日までのどんよりと曇った
どこまでも続きそうな灰色の空ではなく、
冬の冷たい空気がピーンっとはったような
鮮やかな青の衣を
まとったような空に映える東京タワー。
君は前の日、僕があげた白のワンピースに赤いウールのコートを身に纏い、ひとり東京駅の新幹線のホームの隅のベンチで『待ち人』が来ないひとりの時空に身を委ね、
視線もさだまらないまま3時間
現れない僕を待ちくたびれてた。
ーーやっぱり…
あたし…
シュウくんに捨てられたんだ……
ーープルルルルルル…
と発車のベルが虚しくホームじゅうに響き渡る。
それでも君は立ち上がろうとはしない。
正確には立ち上がる気力も
何処かに置き忘れたきてしまってた。
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