第1話「やるせない朝の一時」

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第1話「やるせない朝の一時」

「もっと地道な努力を継続させれば、僅かずつではありますが成績は向上すると思います」 「素晴らしい才能を持っていますので、間違いなくこれから劇的に伸びるはずですよ」  前者は昨年の三者面談で担任の先生に言われた台詞、そして後者は今年の三者面談で「同じ」先生から言われた台詞だ。  お分かりいただけただろうか?  先に断っておくが、先生は多重人格者では無い、ハズだ。  そして、俺は正直言って『バカ』だ。控え目に表現しても『バカ』だ。オブラートに優しく包んでも『バカ』なのだ。  成績も、昨年と今年を比べて全く上昇の兆しが見えない。  カレイやヒラメのように底辺付近をゆらゆらと漂っている。  自分で言っていて悲しくなってきたのでこれ位にしといてやろう、俺。  さて、それにも関わらず、先生のこの手のひらを返した言い分はどうだ。  もしかして、褒めて伸ばそうとでも思ったのか? 「やればできる子」ってか?  残念! 俺はそんなに単純じゃないんだよ。  ……まあ、多少は喜んじゃったり、嬉しかったりはするけどね。人間だもの。
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