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そんな訳で、あえて早々に友達作りをドロップアウトし、ぼっちを貫く決意をしたのだが、いざ一人で過ごしてみるとこれが超絶に寂しい!
加えて、偏差値が最底辺にある俺に対する周囲の反応は冷酷で、いてもいなくてもいい存在、まさにアウトオブ眼中になっている。
兎じゃないけど、これは死ねる。少なくとも、このままじゃ精神病む。
いっそ魔法使いにでもなりたい。30歳童貞的な意味ではなく、異世界転生ラノベ主人公のような、自分で自分を人生の主人公と思える人間になりたい。
なんて、また現実逃避か。最近多くなってきた。もう末期だな。
「魔法…………か。ハハッ、バカか俺」
……ま、悩んでたって仕方ないよね。とりあえず今日も一日よく頑張った。
さ、とっとと帰ろ――――。
「おーーい、安積と結乃宮。この後ちょっと一緒に生徒指導室まで来てくれ」
「ハイ」
「へっ!? あ、はい……」
ザワッ……。
教室内を僅かに異様な空気が流れる。
さもありなん。俺だって何の冗談なのかと耳を疑った。
結乃宮 葵
学内偏差値トップクラスで品行方正、容姿端麗、交友関係も良好。ぼっち馬鹿の俺とセットで呼び出されたのが、こんな超人女なのだから驚かずにはいられない。
月とスッポン、雲泥の差、提灯に……何だっけ? まあいいや。とにかくステータスがかけ離れた異色の組み合わせで、周囲が不思議に思うのも当然だ。いや、むしろ気味が悪い位なんですけど、一体何だというのだろう……。
「行きましょうか、安積くん」
「あ、うん……」
同じ学校で生活してはいるが、きっと俺とは全く違う世界で生きているのだろう。
隣に並んだ彼女は、ちょっと手を伸ばせば届く距離なのに、妙に遠く感じた。
……そして、流れる髪先から微かに伝う甘い香りと端整な横顔に、不覚にも少しドキッとしてしまった。
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