1.突然の別れ話

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少なくとも愛情は持ってくれている。それは分かっていた。 自分と過ごしている時、リラックスしているのが分かるし、 身体も頻繁に求めてきてくれる。 でも。 おそらく、自分と同じ温度の好きではない、と分かった。恋い焦がれてやっと付き合えたと喜んでいる自分とは違う。 しかも、同棲してしまった今ですら、結婚する気持ちはないのだという。 付き合う前なら、もっと頑張ろうと思えただろう。 でも、もう私に出せるカードは無い。 一緒に生活してしまって、もう見せられるものは全部見せてしまった。 それで出した答えなら、もう、それが覆ることはないだろう。 何より、その状態で一緒に暮らす苦しさに、耐えることは出来ないと思った。 みっともなく縋り付きたくない。 私から、去りたい。 その日の夜、旭は颯に別れを提案したのだった。
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