8.颯の決断

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『話がある。』 そのメッセージを送ったのは昨日の夜。 今回の件の直後だ。やはり、香月との面談で何か言われたと思ってるだろうな、と考えながら、颯は土産のプリンを片手に旭の家を訪れた。 腰を落ち着けて早々に、話を切り出す。 「旭」 「俺は、中国の会社設立の公募に応募しようと思ってる。」 旭が息を呑んだ。 言葉が出ないその様子に、颯の胸が苦しくなる。 「・・ど、どのくらい・・?」 「最低、2年」 にねん、と呟く。 「やっぱり、香月さんに何か言われた?」 悲しそうに言う旭に、優しく微笑んだ。 「関係ないよ。来期は俺達のどちらかが異動になるだろう、とは言われたけど。」 「颯」 「ん?」 「寂しい・・」 その言葉を聞いた瞬間、こんなに愛おしいものがあるんだろうかという気持ちがこみ上げる。弾けるように旭を抱きしめた。 「旭」 「俺は、今のままではだめだ。人間的にも、成長したい。」 小さく震えている。旭が泣いている。 俺は、本当にお前に辛い思いをさせてばかりだな。 「2ヶ月ほど選考に向けての準備がある。通過すれば、その1ヶ月後に出発だ。」 頭を撫でながら話す。 「落ちるかもしれないね。」 「おい。」 泣き笑いの顔で、旭が顔を上げた。 ぐしゃぐしゃの顔を見て、離れたくない気持ちが湧き上がる。 「旭」 「記念に、するか?」 「・・・」 「迷うなよ。襲うぞ。」 じっと見つめる瞳に誘われているようで、飛びつきたい自分を抑える。 「旭」 「・・ん?」 「帰ってきたら・・」 無言で見つめ合う。 「・・いや、やっぱりいい。」 「なによ。」 旭が吹き出した。 いたずら心が沸き起こる。 耳元に顔を寄せて、囁いた。 「帰ってきたら、いっぱい、しような。」 真っ赤になった旭を見て、颯は満足そうに笑った。
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