9.二年間

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「榛名さーん!!」 今月から一緒に仕事をしている南さんが駆け寄ってくる。確か、入社3年目と言っていただろうか。 「聞きました!?なんか、上海で活躍してた有望男子が帰ってくるんですって!!」 「へぇ、そうなんだ。」 穏やかに答える旭に、不満そうに言う。 「榛名さん、こんなこと、言いたかないですけど、榛名さん今年もう31でしょう。可能性のあるものにはどんどん行かないと、結婚出来ませんよ!!」 その剣幕に、そうだね、とくすくす笑う。 もう!分かってるんですか!!と怒っていたその子は、次の瞬間には旭の背後に目をやっていた。 「あ!橘さん!!」 橘さーん!!と今度は駆け去っていく。 あまりの可笑しさに声を出して笑った。 上手く振り払ってきたのか、旭を追いかけてきた橘が横に立つ。 「橘くん。」 「営業最優秀賞、おめでとう。」 ありがとうございます、と嬉しそうに微笑む姿も、随分大人びた。 「瀬戸口さん、帰ってくるんですね。」 見晴らしの良いバルコニーには、今は誰もいないようだ。 「旭さん」 「俺、あの二人が怖くて参戦できませんでしたけど、」 「あなたのこと、好きでした。」 「今度、手を離すことがあったら、俺が掴みにいきます。」 それだけ、言いたかったんで、と照れくさそうに笑った。 ありがとう、そう言って旭も頬を染めて微笑んだ。
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