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「榛名さーん!!」
今月から一緒に仕事をしている南さんが駆け寄ってくる。確か、入社3年目と言っていただろうか。
「聞きました!?なんか、上海で活躍してた有望男子が帰ってくるんですって!!」
「へぇ、そうなんだ。」
穏やかに答える旭に、不満そうに言う。
「榛名さん、こんなこと、言いたかないですけど、榛名さん今年もう31でしょう。可能性のあるものにはどんどん行かないと、結婚出来ませんよ!!」
その剣幕に、そうだね、とくすくす笑う。
もう!分かってるんですか!!と怒っていたその子は、次の瞬間には旭の背後に目をやっていた。
「あ!橘さん!!」
橘さーん!!と今度は駆け去っていく。
あまりの可笑しさに声を出して笑った。
上手く振り払ってきたのか、旭を追いかけてきた橘が横に立つ。
「橘くん。」
「営業最優秀賞、おめでとう。」
ありがとうございます、と嬉しそうに微笑む姿も、随分大人びた。
「瀬戸口さん、帰ってくるんですね。」
見晴らしの良いバルコニーには、今は誰もいないようだ。
「旭さん」
「俺、あの二人が怖くて参戦できませんでしたけど、」
「あなたのこと、好きでした。」
「今度、手を離すことがあったら、俺が掴みにいきます。」
それだけ、言いたかったんで、と照れくさそうに笑った。
ありがとう、そう言って旭も頬を染めて微笑んだ。
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