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二次会は、主に学生時代の友人が新郎新婦の周りを囲み、盛り上がっているようだ。
千夏と橘、蓮、そして桐山は、端の方で同じ席に座っていた。
「幸せそうだねー。」
千夏の言葉に、ねー、と蓮が応える。
「あーあ。旭さんがとうとう人妻に・・」
橘は披露宴から何度も同じことを言っている。お酒もまわって自立出来ず、ほぼ蓮にもたれかかっている状態だ。
「桐山さん」
「ん?」
「大丈夫なんですか?」
色々あった(という言葉で済ませていいものか)にも関わらずポーカーフェイスで式に参加する姿に、心配になって聞く。
「大丈夫ではないね。」
その答えに、大丈夫じゃないんだ、と苦笑する。
「次にあいつが彼女を傷つけることがあれば、今度はもう、無理矢理にでも奪うよ。」
なんか、物騒な言葉が聞こえたぞ。
千夏はぶる、と身体を震わせた。
「いや、次は俺です!」
勇気を出してそう言った橘は、桐山に鋭い目で「ふーん」と返され、怯えるように蓮の後ろに隠れた。
ふと、気になって聞く。
「水瀬さんはさ、」
「なんとも思わなかったの?」
旭のこと。
桐山と橘も、ちらりと蓮を見た。
少し間を開けて、答える。
「好きでしたよ。」
「「え!?」」
桐山の目も、丸くなっている。
「正確には、好きになりそうだった、かな。」
驚く3人を可笑しそうに見ながら続ける。
「配属の日に初めて会って、
かわいいし頑張るし、なんか、ちょっと隙もあるし。」
そりゃ、あー、いいなーって思いましたよ。
「でも、鷹みたいな目ぇした上司と、強引な同期と、子犬みたいな後輩が目ぇギラギラさせてるんですもん。」
これは、俺がいったら収集つかないな、と思って。
「まじか。」
旭、あんたはほんとにすごい。
「颯は、気付いてないと思いますけどね。」
内緒にしといてくださいね、と穏やかに言う姿に、もしかしたら一番辛かったのはこの人かもしれない、と思った。
「知らない方が、幸せかもね。」
そんなやり取りがなされているとは知らず、腕を組んで幸せそうに微笑む二人を見る。
絶対、もう手を離しちゃだめだよ。
そう心の中でつぶやき、千夏は美味しそうにワインを飲み干した。
end
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