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――殺されるとか、逃げなきゃとか…そんなこと言ってる相手に関わるなんて、本当にろくなもんじゃないっていうのにさ…。
本当に自分は、お節介でいけない。
絶対面倒に巻き込まれることは確実で、自分の身を心配するのならすぐにでも誰かに連絡して、悠梨を引き取って貰う方がいいはずなのに。
御飯を作って待ってくれていた――それだけで、既に随分絆されている自分がいる。
「お待たせしました」
皿を片付けた彼が戻ってくる。結局彼一人に全部片付けさせてしまった。申し訳なく思いつつも、梨花子はなんとなく背筋を伸ばして座りなおす。
「僕に話せる範囲でなら、お話します。何からお話すればいいでしょうか」
相変わらず無表情に、それでもしっかりした声で――少年は言う。何から――何処から?梨花子は少し悩んで、まず一番気になったことを尋ねることにした。
「えっと、さ。君を連れてきた、紗世…松田紗世っていうのは、私の昔からの友達なんだけど。紗世と悠梨君って、一体どういう関係なの?」
「紗世さんは、僕の伯母です。僕の父の妹にあたります。つまり、紗世さんの甥が僕ということです。といっても、父と伯母は年も離れていますし、随分疎遠になっていたようで…僕も最近会ったばかりなのですが」
「あー…なるほど…」
そういえば、紗世には兄貴がいたっけ、と思い出す。普段は真面目だけど、酒癖が悪いから嫌いだ、とはっきり言っていた気がする。梨花子自身は会ったこともないが、紗世がそこまで言うのはよほどだな、と思った記憶はあった。
「紗世さんは、僕が殺されると思って、僕を家から連れ出してくれたようです」
そして、悠梨は衝撃的なことを口にする。
「僕を殺そうとしているのは…紗世さんの兄。つまり、僕の父なんです」
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