<第四話>

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「時間も遅くなってきたし、とりあえずお風呂入っちゃおうか。片付けは」 「やっておきます。お風呂も既に入ってますよ」 「おおう、仕事がはやーい…」  ん?とそこで梨花子は気がつくことになる。そういえば、彼はまるで梨花子が帰ってくる時間がわかっていたようだった。梨花子の仕事はそこまで残業が多いものではない(以前はもっと残業時間が多かったのだが、最近は会社側も残業を減らして過労死対策キャンペーンに必死になっている様子である。万が一のことが起きたら、信頼が失墜し名誉が傷つくどころではないからだろうが)。でも、今日は実際遅かった。定時の六時より、二時間も残業をしてから帰宅している。にも関わらず――明らかに、それに合わせて御飯が出来上がっていたような気がするのは、気のせいだろうか。  しかも今聞いたことが正しいのなら、もうお風呂も用意してあるとは。 「悠梨…君、私が帰ってくる時間、どうしてわかったの?」  梨花子の疑問に気づいたのだろう。悠梨は、ああ、と頷いて答えた。 「梨花子さんのお勤め先は、株式会社FFKコーリングですよね。そこのカレンダーは非売品のマークがついてました。つまり、社内で配られたものだということです」 「あ、確かに」 「梨花子さんは紗世さんと同じ名古屋のご出身だったはず。状況したのは会社に勤めるため。つまり、会社に通いやすい場所に住んでいると考えるのが妥当です。少々古すぎるこのアパートにお住まいなのもそういうことでしょう。大手通信企業、FFKコーリングの…ここから一番近い支社は新宿。電車を使っておおよそ一時間の距離です」  あんぐりと口を開けてしまう梨花子。カレンダーだけ見てそこまで分かるものなのだろうか。まるで名探偵だ。思わず、続けて、と続きを促してしまう。
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