<第一話>

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 中学も、高校も、大学も――みんなそんなかんじだった。学校の先生である確率は高い。梨花子は基本的に年上が好みだった。兄のように父のように甘えさせてくれる相手が好きで、そういう存在を恋愛にも求めてしまうのが最大の原因だったのだろう。当然、倫理的に大いに問題があるわけで。――しかも彼らには八割方、カノジョか奥さんがいる。その上で、同年代からは“カノジョにならないけど頼れるアネゴ”扱いなのだ。そりゃあ彼氏らしい彼氏が今まで出来なかったのも必然と言えば必然だろう。  そしてやっと両思いになれたと思った相手が、同じ会社の上司で、不倫ともあれば。もはや笑うしかないのが実情である。 ――こんなこと続けてちゃいけない。わかっちゃいるけど…それで割り切れるならこんな苦労することもないんだよな…。  梨花子ははぁ、と深く溜息をついた。紗世が少年を置いていった、その翌日のことである。最近は会社に行くのも辛くて、ストレスが溜まってばかりの日々だった。自分のことだけでもいっぱいいっぱいなのに、真夜中に突然飛び込んできたトラブルがこれである。  自分に一体どうしろというのだ、と梨花子は思う。いかんせん――紗世はほとんど何も説明しないまま、彼だけを置いてすぐにいなくなってしまったのである。 『理由は後で必ず説明する…!でも今、話してる余裕なんかないの。見つかる前に、私も逃げないといけないから…!!』  一生のお願い!と紗世は少しの現金を置いて梨花子に頼み込んだ。 『この子を匿って。…警察にも言わないで。出来る限り家の外にも出さないで。……見つかったら、今度こそ…悠梨は殺されるかもしれないの』
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