<第一話>

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――何があっていうのさ、紗世…!この子はなんなの?一体何に巻き込まれてるっていうの…!?  ヤバイ匂いがぷんぷんする。今日は平日だ。もう少ししたら自分は仕事に行かなければいけないが――一体どうするべきなのだろう。  少年は、最初に居間に通された時のまま――居間で正座したままである。結局寝たのかどうかさえわからない。日本人にしては随分明るい、赤みがかった茶髪の少年は眼の色も灰色のような青いような、不思議な色をしている。明らかに純血の日本人ではない。外国人か、あってハーフだろう。恐ろしく綺麗な顔をしているが、いかんせん無表情で必要最低限しか喋らない。眼が完全に死んでいる、ようにも見える。  わかったのは彼が名乗った名前――姫条悠梨。そして、年齢が十三歳ということだけだった。比較的長身の梨花子からすれば、少し見下ろしてしまうくらいには小柄である。 ――匿えって…何かに追われてるの?私、このまま仕事行っちゃっていいのか…!?  梨花子が悶々と悩んでいると――悠梨、と名乗った少年は。少し考えた様子で、口を開いた。 「安藤さん。…僕のことを気になさっているのでしたら、いいです」 「え」 「深夜に突然押しかけて本当に申し訳ありませんでした。…僕なら、大丈夫です。今日は此処から一歩も出ません。いつも通りお仕事をしに行って下さって大丈夫です」  ですから、と彼は告げる。無感動に、無表情に。 「ご心配いりません。…僕から話せることは、今日の夜にでもきちんとお話します」
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