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結婚式のことで打合せがあるから今週どこかで会えないか、という内容だった。予定を確認して、日曜日ならば大丈夫であることを伝えると、その日に会うことが決まり、それで通話が切れた。
気が付くと浩之は、自分の存在意義について考えていた。
自分は彼女にとって、どういう役割なのだろう。ただの結婚相手、というだけで、入れ替え可能な存在なのでは?
結婚式もそうだが、そういえば結婚そのものも彼女が主導だった。費用の負担も彼女よりになるだろう。お互いの実家や親族のことを考えるとご祝儀の額もきっと違う。
目に涙が溜まってきた。なぜだかわからなかった。情けなさを感じていたのかもしれない。惨めなのかもしれない。
しかしそれでも泣くほどのことなのか。自分はそんなに男らしさや優劣にこだわって生きてきたのか。いや、それならばこんな立場にはならずに済んだはずだ。
自分でも何を考えているのかわからなかった。
全て投げ出したくなっていた。
何もかもが面倒だった。考えることも、悩むことも、思うことも苦痛に思えた。
タクシーの窓には、生気のない自らの姿が、半透明に写っていた。亡霊のようだった。
そしてぼんやり、死にたい、と願っている自分に気がついた。彼は頭を振った。
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