3章 お嬢ちゃん

18/18
44人が本棚に入れています
本棚に追加
/218ページ
 少年は厨二病だったのか、だから《勇者》とか《修行》って言葉に興奮していたのか。可愛い奴だ。 「あれ? 木こりのお守りって何ですか? 私の装備に……」 「お姉ちゃん、これじゃない?」 「これは? 私こんなもの持った覚えは……あっ、これお父さんの」 「いつかこんな日が来るって分かってたのかも知れないね。自分の夢に向かって歩き出した愛娘を離れてても守れるように」 「そんな……だってお父さんは、」 「俺も子供いないから分からないけどさ、子供には好きに生きて、元気でいて欲しいんじゃないかな? なんだかんだ言っても結局それが一番なんじゃない?」 「……ズズッ……お父さん……」 「ああ。そういや、伝言頼まれてた」 「…………」 「いつでも帰って来い。ってさ」  その日、感情豊かな親子の声は小鳥のさえずりも、虫のさざめきも掻き消して森の外まで響き渡ったという。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!