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大倉の真面目くさった眼差しが甦る。長年の付き合いだ。冗談や嘘を言う時に、左の頬に片えくぼができる癖は、友人なら皆知っている。
「お客さん、そろそろ暖簾なんで」
「あ……ああ。すみません」
気付けば、店内の客は俺だけになっていた。勘定を済ませ、かなり危ない足取りながら、外に出る。
雨は上がっていたが、ネオンの消えた街はいつもより暗い。終電も終わっていた。
幸い、タクシーはすぐに拾えた。思いがけず深酒になっちまった。車窓に映るくたびれた50男が溜め息を吐く。
俺の愛娘を嫁に欲しいと言った、大倉の頬にえくぼは無かった。
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