父親と息子

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「親父、母さんを選んで後悔したのかよ? もっと健康で長生きする奥さんが良かった、って」 「馬鹿野郎!」  今度は言葉になった。  だが、言った端から後悔した。  優太朗が、分かってて口にしたと、伝わったからだ。 「姉貴達だって、一緒だよ。ちゃんと考えて、決めたことなんだ」  何で……コイツが泣きそうな顔をするんだよ。 「――親父なら、分かってくれるって……姉貴が。後でラインしてやってよ」 「優太朗……」 「バイト、行ってくる」  まだ苦し気な表情を細い眉の辺りに残して、息子はリビングを出て行った。  気付けば、ソファー周りもダイニングも綺麗に片付いている。ガキだとばかり思っていたのに――いつの間に――本当に、子ども達は、いつの間に大人になっていたのだろう。  独りになった家の中で、やけに静けさが耳につく。  家族から取り残された気分になり、俺は、久しぶりに落ち込んだ。
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