第一幕   落ちしアニマと悩めるアニムス

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   1.  ボクは保健室の先生が好き  ボクは保健室の湯島(ゆしま)(ルイ)先生が好きだ。  好き、では語弊があるかも知れない。  憧れ……?  そう、憧れもある。  泪先生は四月から、ボクが在学する私立朔間(さくま)学園高等学校へ赴任して来たばかりなんだけど、ボクは彼女を一目見た瞬間から心を奪われた。  先生は可愛い。かつ妖艶だ。  年齢は二〇代後半。小柄かつ華奢な双肩は思わず抱きしめたくなるし、滝のように腰まで流れる黒髪は一日中撫で回しても飽きそうにない。小顔な目鼻立ちはボクたち高校生と大差ないくらい若々しい。指先のか細さと言ったら、白魚(しらうお)なんて比較にもならない。 (保健室の先生……正確には『養護教諭(ようごきょうゆ)』って言うんだっけ?)  養護教諭とは保健室で待機し、生徒たちの怪我や病症を診る職業だ。  その際、保健室で処置しきれないときは専門の病院など医療機関への連絡も行なうし、生徒のみならず教員たちの健康を診ることもある。  加えて『保健主事』という管理職を兼任することも多く、校内の水質調査、空気調査、日照調査と言った、環境や衛生の状況把握と維持を担っている。
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