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あっさり観念して平伏する奴まで出たから、さすがにナミダ先生も苦笑したよ。
「あるある。自分の立場が危うくなると途端に命乞いする三流悪役、よくある」
――そして、先生の無双が開幕した。
ステッキを振りかぶり、横に薙ぎ、すくい上げ、突き出す。
左の義足を軸にして、円を描くように立ち回り、敵をいなして行く。
そのつど暴漢が一人ずつ地に伏し、宙を舞い、横倒しにされて、泡を吹いて気絶した。
流麗な演武でも見ているかのような、素敵な杖術だった。
まるで舞踊だ。
暴力の血生臭さはそこになく、ナミダ先生の美しさと猛々しさだけが、この舞台を構成する全てだった。
(かっこいい…………って、あれ?)
ボクはいつしか、ナミダ先生に見とれていた。
おかしいな。ボクは体こそ女だけど、心は男勝りで、同性の泪先生が好きなのに――。
*
・使用したよくあるトリック/見立て、叙述
・心理学用語/適応機制、攻撃機制、同一化、リビドーの変容と象徴、モーゼと一神教
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