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けど、それはもう叶わないのだろうか。
あの人は大学で身辺整理に忙しい。恩師が逮捕されたことで、研究室が閉鎖されるらしい。准教授推薦の道も白紙に戻されなければ良いけど。
かと言って、あの人が無事に出世すれば、スクール・カウンセラーとして顔を合わせることもなくなるわけで……。
はぁ……複雑な心境だ。
「きゃ~お兄ちゃんっ」
ん?
泪先生の嬌声が響いた。
後ろからだ。
制服のすそを翻したボクが見たものは、職員室から退室するナミダ先生の姿だった。
……居たのかよ!
それをめざとく発見する泪先生も抜け目ないなぁ。保健室の戸口から虎視眈々と見張っていたんだろうか。
とにかく、ボクは湯島兄妹が抱き着く様子を、目と鼻の先で目撃した。
全く、これで何度目だろう。
いい年した大人が――それも実の兄妹が――人目もはばからずイチャイチャ抱擁するなんて、目の毒以外の何物でもないよ。
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