終幕   ボクは心に沁み込ませる

1/6
48人が本棚に入れています
本棚に追加
/237ページ

終幕   ボクは心に沁み込ませる

 ――こうして、事件は幕を閉じた。  ボクは家に帰るなり、母さんに泣いて抱き着かれた。  心配していたらしい。  だから警部さんも大急ぎで動いたわけか。本格的に通報されたら大騒ぎになってしまうからね。  ともあれ、ボクの身の危険はなくなった。  翌日、保健室には泪先生が笑顔で待ち構えていて、ボクをすげなく追い返す。 「君はもう、どこも悪くないでしょ~?」  ついに仮病認定されてしまった。  以前は無条件で招いてくれたのに、今は素っ気ないものさ。塩対応ってやつか。  でも、仕方ないのかな。ボクの心は完治し、こうして元気になったのだから。  保健室を引き返し、廊下をあてどなく歩く。  職員室の奥に『心理相談室』の看板が見えた。 (ナミダ先生……今日は来ないかな?)  まだボクは、ナミダ先生に礼を述べていない。  助けに来てくれてありがとうって。
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!