1.トカゲと少女

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1.トカゲと少女

 真上から照りつけていた太陽は、あらかた西に傾き、森の中は涼しくなってきた。レディバは改めて周囲の音、空気、匂い、そして、視界と、全ての五感を使って危険がないかを確認したが、ひとまず、一息ついても問題なさそうだ、と判断した。  傍らの少女は、固く表情を変えないが、疲労はしていたのだろう。レディバが休憩を指示すると、腰から革の水筒を取り出して、ごくごくと飲み干した。うっすら聞こえる川の音を確認し、後で水を汲みにいってやろう、とレディバは考えた。  レディバは被っていたフードを外し、口の突き出した、ゴツゴツと緑の鱗に覆われたトカゲの顔を表に出した。少女は、初めから彼の顔を見ても、眉一つ動かさなかった。人間と関わることの少ないレプティリアンの顔は、彼女にとって、見慣れたものではないはずだが、気丈な性質の彼女の動揺を誘うものではなかった。また、突然、彼女に降りかかった運命の波の上では、それ以上に、先の見えない暗闇の道に慣れるのでいっぱいだった、ということもある。     
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