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彼らは突き出た岩が天井となり日差しを避けられる、広い岩陰の中に腰掛けていた。この岩陰は、暑さを避けるだけでなく、周囲から隠れる場所としても、最適の場所だった。少女は奥の岩壁にもたれかかり、レディバは日と影が境界を作る少し手前の影の部分に、外界を見張るように座っていた。
ウィスタの街で斡旋屋から紹介を受け、その日の午後には、レディバはその少女と出会っていた。
ウィスタは検問が厳しく、レディバのような異型の旅人が出入りするのは、容易な街ではない。しかし、有力な商人の多く住むこの街では、多くの物資が手に入るため、なるべく馴染みの顔売りーーー旅人が街や村へ出入りする際、安全を保証する職を行う者ーーーに頼んで、寄るようにしている。
顔売りは、旅人と街の人間を繋いで、旅人に仕事を斡旋することもある。ウィスタの街に入る代償は、危険な仕事を受けることだと分かってはいるが、これが、彼の生きる道であった。
顔売りの保証の下、街中に踏み入れた者には、街の人間も最低限の愛想は振りまく。特に、商売人にとって、これらの旅人は、一度に大量の購入が期待できる良客だった。余計なトラブルを避けるため、トカゲの顔はフードで隠す必要はあったが、午前のうちには、必要な武器と保存食、なくなりかけていた救急道具といった、必要品を調達することが出来た。
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