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路上の屋台で簡易な昼食を済ませた後、レディバは待外れの古い屋敷に招かれた。館の周囲は、人払いがなされており、がらんとしていて誰もいなかった。屋敷の中にいたのは、顔売りとツイードを着た白ひげの老人、少女の三人だった。少女はサラと名乗った。
「人間か。」
「ああ、お手軽だろ?なんせ、自分で動くから、持ち運ぶエネルギーが必要ない。」
ヒキガエルを潰したような声で、今回の仕事を紹介した顔売りが、そんなことを言う。ララスという名のこの男は、いつもにやりとした笑顔を振りまき、センスのよいとも言えない冗談を言ったりするが、あまりに笑顔を崩さないので、仕事については信頼出来ても、人間としては、かえって胡散臭さを感じさせた。背は小柄で百五十を少し超える程度。イボがぶつぶつとついた顔は控えめに言っても不器量だった。
「あなたの仕事は、この娘を隣の国のオルジークまで届けることです。」
レプティリアンとは、余計な会話などしたくもない、というように隣の老人は無愛想に言った。レディバにとっては慣れたものだが、依頼人なのに、名前も名乗らない。
「道中は、極力、他人には会わないようにしてください。南の丘を超えて、バゼルの森に入るといいでしょう。川沿いに西の出口を出れば、オルジークです。」
「国越えか。随分なお嬢様だな。」
「・・・余計なことは聞かないものと聞いていましたが?」
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