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老人はレディバでなく、ララスに言う。レプティリアンを嫌う人間は珍しくもないが、個人の感情を隠そうともしない態度から、あまり情報を隠すのも上手くない人物だな、とレディバは思った。
ララスは、仕事には誠実ですよ、とガラガラの声で返す。余計なことを言うと、必要のない情報が漏れてきそうで、レディバは黙った。だが、老人もむっとしたまま黙った。話はそれで終わりだということらしい。
やや極端だが、このような依頼人も珍しいものでもなく、レディバは、あっさりと仕事を引き受けた。
サラは黙ってこのやり取りを聞いていた。隣の老人と違って、凛とした立ち姿で、レディバを見つめていた。背筋は真っ直ぐ伸び、優雅とさえ言える細い二本の足を前に向け、肌こそ青白くやや活気に欠けていたが、その青い目ははっきりとレディバを見上げて、彼という人物を観察していた。その姿勢は、十になるかどうかの、幼い少女のものとは思えなかった。レディバの知らない、彼女の運命に立ち向かう決意が、日の光のように透けて見えるようで、レディバは内心、感心した。
夕方のうちに出発し、その日は夜通し南に向かって歩いた。翌昼の小休憩の後は、夜になるまでに丘を一つ超え、用意されていた舟で川を超えて、バゼルの森に入った。
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