2人が本棚に入れています
本棚に追加
レディバは、レプティリアンの性質上、あまり優れた聴覚を有してはいない。残った四感も駆使して気配を感じようとするが、ザクザクという、木々を分け入るような音はわかっても、生き物の種別までは判別がつかなかった。
彼は一度、目を閉じ、次いで、大きく極大まで瞳孔を開いた。彼の瞳孔は光のない赤色に変わり、彼の身体は石像のように硬直した。サラも急な変わりようには、さすがに驚き、小さくあっと声を出したが、レディバの方では、サラの声は気にせず、数分、静止していた。
「森トロルだ。」
再び、元の黄色い目に戻ると、レディバは言った。
「少し、離れてはいるが・・・どうするかな。」
森トロルは、他種族に友好的ではない。特にレディバとサラのような人型の生物に対しては、縄張りの危機とばかりに、見つかり次第、襲いかかってくる可能性が高かった。
方向によってはやり過ごせる可能性もあるが、とレディバは考えながら、ザックに入れていた煙草を取り出し、火を着けた。
最初のコメントを投稿しよう!