6699人が本棚に入れています
本棚に追加
「気になるけど、聞かない。蔵本さんが話してもいいと思えるまで待つよ」
「……」
「ほんとにごめん。ほら、せっかくメイクしてるのに沈んだ表情じゃ勿体ない。笑おう」
そう言ってパッと明るい顔を見せる隼人に、琴莉はぎこちないながらも笑みを見せる。
無理に踏み込もうとしないで待つと言ってくれた気持ちが嬉しかったし、隼人が案じてくれていることは、琴莉自身もよくわかっていた。
それにしても。
酔って寝てしまったことも、自分が何を言ったのか記憶していないことも、これまでにはなかったことだ。おまけに、よけいなことも言ってしまったらしい。下手なことをしないよう、あんなに警戒していたというのに。
再び楽しげに手を動かす隼人を鏡越しに見つめながら、不思議な人だな、と思った。
最初のコメントを投稿しよう!