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「はい、出来上がり」
手を止めた隼人の言葉も耳に入らないほど、琴莉は鏡に釘付けになっていた。
「誰ですか、これ」
「やだなぁ、蔵本さんに決まってるでしょ」
「はぁ……それはそうなんですが……」
艶のある肌にほんのりと差した血色のいい頬の朱、いつもより1.5倍はあるかと思えるほどの大きな瞳、まつげも自然に上向いており、いかにもという感じが全くない。唇も肌に馴染むピンクで、一見何もしていないようなナチュラルメイク。しかし、本当に何もせずここまでの素顔なら、あちこちでスカウトされてもおかしくないんじゃなかろうかと思えるほどだった。髪も綺麗に整えられ、まるで美容室帰りのようにサラサラと艶やかだ。
プロというのはここまですごいのか、と琴莉は驚愕していた。
「僕が上司でよかったと思わない?」
「今初めてそう思いました」
「……何か複雑だけど、とりあえずよかった」
言葉どおり複雑な笑みを浮かべる隼人に、今度は琴莉がクスクスと笑う。
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