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「恭子さんは蔵本さんを僕につける前、言ってましたよね。仕事はできるし、臨機応変に動ける有能な人材だと。なのに、自分の力をセーブしてどこか一歩引いている。仕事が好きじゃないのかと思えど、そうじゃない。本当はもっとやりたいはずなのに、わざと自分にブレーキをかけている気がする、と」
「……言ったかもしれないけど、そんなこと、よく覚えてたわね」
恭子が吐息をつくと、隼人は少し身を乗り出して後を続けた。
「僕もそれを実感しているんです。何故、彼女がそんな風にするのかはわかりません。でも、このままじゃ勿体ない。蔵本さんはもっと自分のやりたいことをやるべきだ」
「隼人君のサポートは向いてない?」
「いえ、とんでもない。僕は蔵本さんのサポートのおかげで、以前よりもずっとやりたいようにやれています。だから、彼女を手放すつもりはありません。でも、今の仕事だけじゃ物足りない」
「……」
恭子は数分間隼人をじっと見つめ、クスッと笑みを漏らした。
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