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『絶対手伝ってもらうからね。前に恭子さんを手伝ってるんだから、当然だよね?』
『前は前、今は今です』
『直属の上司からのお願いは聞けないってこと?』
『私は隼人さんの事務処理のフォローでここに来ましたし、それはちゃんとやってます』
『そんなこと言っちゃうんだ』
『……な、何ですか』
『酔っぱらって寝ちゃった誰かさんを介抱したのは誰だっけなぁ……』
『きょ、脅迫っ!?』
『そんなつもりはないけど、そう聞こえちゃった?』
『聞こえるも何も、そのとおりじゃないですか!』
『ま、それでもいいや。で、蔵本さんの返事は?』
ここまで言われて、NOと言えるはずがない。琴莉は力なく頷くしかなかった。
「あれは本当に失敗した……まさか弱み握られるとは思わなかった……私としたことがっ」
「琴さん? 何ブツブツ言ってるんですか?」
「え!? な、何でもない! 鯖、美味しいなぁって!」
誤魔化すように必死で笑顔を取り繕い、心の中ではやらかしてしまった自分の失態を激しく後悔している琴莉だった。
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