03. 動き始めた運命の輪。

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「好きな人がいるんですか?」 「そういうんじゃなくて。僕は仕事に夢中だから、恋愛してる暇がないんだよ」 「私、それでも構いません。隼人さんのお仕事の邪魔はしませんから」 「皆、最初はそう言うんだよね。でも考えてみて。自分のことをほったらかしにする彼氏なんて最悪じゃない? 僕はそういう男だよ」  彼女をほったらかしにする彼氏、確かに最悪かもしれないが、なんとなく琴莉はモヤモヤする。  隼人の仕事に対する情熱、仕事をしている時の表情、それらを見てしまうと、ほったらかしでもいいんじゃないかと思ってしまう。  仕事をしている隼人を笑顔で見守れるような、そんな包容力があれば恋愛も成立するだろうに。  思わず隼人を擁護するような気持ちになり、琴莉は慌ててそれを打ち消した。 「私には関係ないし……えっと……やっぱ帰ろ」  そっと給湯室を出ようとした時、再び英美里の声がして、琴莉はその言葉にカップを落としてしまいそうになる。
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