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「私を断る口実ですか? 本当は好きな人、いるんですよね。それ、蔵本さんじゃないですか?」
何とかカップを落とさずにすんだが、琴莉は益々この場から動けなくなった。まさかここで自分の名前が出てくるとは思わない。
英美里は何か誤解をしている。おそらく、これまでも彼女の中でそういった疑惑があったのだろう。そしてそれを決定づけたのは、きっと琴莉の今回のイベントへの参加だ。
隼人の事務補佐とはいえ、琴莉は元は総務で全く畑違いの部署出身、にも拘わらず、琴莉を一緒に連れていこうとしている隼人に、彼女はついにキレてしまったのだ。
琴莉が固唾をのんでいると、隼人が落ち着いた口調で話し始めた。
「どうしてここに蔵本さんが出てくるのかな?」
「いくらサポートとはいえ、今回のイベントに連れていくとか、以前の隼人さんなら考えられません。去年は美容部員の方だけだったじゃないですか」
「うん。でも、蔵本さんは以前にうちのイベントを手伝ってくれて戦力になったし。だから、今回手伝ってもらおうと思ったんだけど」
「本当にそれだけですか?」
「そうだよ」
何とか話がまとまりそうでホッとしていると、英美里はまたもや食い下がってきた。
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