6714人が本棚に入れています
本棚に追加
「本当に面白いなぁ、蔵本さんは。これまで僕の周りにはいなかったタイプだ」
「……でしょうね」
「褒めてるのに」
「それはどうも」
我ながら可愛くない受け答えだと思うが、隼人は一向に気にする様子はない。鈍いのか、大らかなのか、謎だ。
そうこうしているうちに、料理が運ばれてくる。隼人はコース料理を頼んでいたらしく、見た目も華やかで美味しそうな前菜が出てきた。
「わぁ……」
琴莉は思わず感嘆してしまう。
イカの乗った一口トーストや、根パセリのピクルス、フォアグラのマカロンなど、今まで食べたこともないようなものが並んでいる。どれもが食べるのが勿体なくなってしまうくらいに美しく彩られていた。
「味も絶品だよ」
琴莉は一口トーストをそっと口に入れる。すると、口の中で様々な味が絶妙に絡まり、あまりの美味しさに言葉を失ってしまった。
「すごく美味しい……。あぁ、自分の語彙力のなさを呪うくらいに美味しいです!」
「でしょ! 美味しいものは素直に美味しいでいいんだよ。僕たちは別に食リポする必要もないんだし」
「……それもそうですね」
美味しいものを食べると、心は豊かになる。先ほどまでのささくれた気持ちはどこへやら、琴莉はすっかり幸せに浸っていた。
最初のコメントを投稿しよう!