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「蔵本さん、ちょっとペース落とそうか」
「大丈夫です! 美味しいご飯には美味しいワイン! まだ全然平気ですよ」
出てくる料理の一つ一つが細やかで丁寧な仕事がなされているのがわかる。そういった料理は当然美味しい。美味しいとお酒が進む。
そういったロジックのごとく、琴莉は先ほどからどんどんとグラスを空にしていた。
「そんなこと言ってて、急に回るんだよ」
「このワイン、口当たりがよくてどんどんいけちゃうんですよー」
「……もう怪しくなってるなぁ」
隼人が苦笑する。琴莉は眉根を寄せ、隼人に顔を近づけた。
「隼人さん、さっきから全然飲んでないじゃないですか! どうぞ」
琴莉はまだワインの入っているグラスを隼人にグイッと差し出す。隼人はやれやれといった表情で、グラスを傾ける。
「美味しいですよね!」
「うん、美味しいね」
まだ頭ははっきりしているようだが、琴莉は明らかに酔っている。
隼人がどうしたものかと思案していると、またもや琴莉が身を乗り出して顔を近づけてくる。どうやら彼女は酔うと距離感がなくなってしまうらしい。
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