6711人が本棚に入れています
本棚に追加
「この距離はさすがにマズイんじゃない?」
「マズイ?」
「うん。少し動いたら唇が触れるね」
「!」
琴莉は大慌てで隼人から離れる。あまりに慌てたものだから、身体が大きく揺れ、軽く眩暈を起こす。
隼人が立ち上がって琴莉を支えようとすると、琴莉は腕を伸ばして「大丈夫ですから」と必死に距離を取ろうとした。
その様がおかしくて、隼人はクスクスと笑みを漏らす。
「君といると退屈しないよ」
「どういう意味ですか、それ」
「辛いことがあっても、笑っていられそうだ」
「……何なんですか。まるで馬鹿って言われてるみたいなんですけど」
「そうじゃないよ」
仕事中はガチガチに武装をしている琴莉が、さっきから怒ったり笑ったりとクルクル表情を変えている。
勢いこんで話し出したと思ったら、急に静かになってみたり、明るく前向きになったかと思えば次の瞬間にはネガティブに愚痴を呟いていたりする。
それが面白すぎて、隼人は琴莉から目が離せなかった。
最初のコメントを投稿しよう!