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「嫌になったことなんて一度もないよ」
「本当に?」
「うん。自分の力不足が悔しいと思ったことはあるけど、仕事を嫌だと思ったことはない」
琴莉は大きく目を見開き、「そっかぁ」と呟く。
隼人は琴莉に言い聞かせるように、後を続けた。
「僕はヘアメイクの仕事に夢中なんだよ。だから、イベントも打ち合わせも全然苦じゃない。休みなんてなくてもいい」
「でもそれじゃ、彼女とデートもできないじゃないですか」
「そうだね。だから、いつもフラれてばかりだよ」
「……彼女よりも、仕事が好きなんですか?」
「私よりも仕事が好きなの?」隼人がいつも言われる言葉だ。これを聞く度、ウンザリしてきた。
仕事にかまけて恋人を放っておく自分も悪い、そうは思えど、仕事と恋人を比べることなどできない。そもそも比べる対象が違うのだから。
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