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「やっぱり覚えてないんだ?」
「あの……」
「昨夜、あんなに可愛く僕に甘えてくれたのに」
「え……」
「なかなか離してくれなくて、大変だったんだよ?」
琴莉の顔がザーッと音を立てるように青ざめていく。
いや、待て。落ち着け、落ち着くんだ私! いくら記憶がないからって、上司に、それも要警戒人物に甘えるとか……ない! 絶対ない!!
琴莉は自分の胸元をぎゅっと掴み、首を横に振った。
「そんなこと、嘘です!」
「だって、覚えてないんでしょ? どうして嘘だって言えるの?」
「だって……だって、服着てるし!」
琴莉が真っ赤になってそう叫ぶと、隼人は大きな声で笑い出す。
「僕、甘えてきたとしか言ってないよ? もしかして蔵本さん、もっと先のことを想像しちゃった?」
「!!!」
「甘えてきた」「離してくれない」そう言われ、てっきりそういうことなのだと思ってしまった。
言葉をそのまま受け取れば、単に駄々を捏ねただけかもしれないし、せいぜい抱きついたりするくらい──。
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