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「かっ、かっ、帰りますっ!!」
琴莉は慌ててベッドから抜け出し、すぐ側にあった自分の荷物をひっつかむと、部屋を出て行こうとする。
しかし、即座に隼人に腕を掴まれ、それはできなかった。
「離してください!」
「ごめんごめん! 蔵本さんの反応が面白くて、ついからかっちゃったんだよ。ごめん、大丈夫だから。何もしてないよ」
「……」
琴莉は荷物を抱きしめ、顔を俯ける。恥ずかしくて隼人の顔をまともに見ることができない。
隼人は琴莉の腕を離し、その手を頭に乗せた。そして、優しく数回撫でる。
「タクシーで帰そうと思ったら、気持ちよさそうに寝てるしさ。僕も途方に暮れたんだからね。だから、これくらいの悪戯は許してほしいな」
「……すみません」
「謝らなくてもいいよ。昨日は本当に楽しかったから」
「……」
何を話したのかすでに何も覚えていない琴莉は頭を悩ませるが、それでも隼人が楽しかったというならそれでいいかと、無理やり自分を納得させた。
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