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「大丈夫、女性のスッピンは見慣れてるから」
「……」
「起き抜けだし、とりあえず顔を洗っておいで」
琴莉は混乱したまま洗面所に向かった。
洗面所もゆったりしたスペースで、大きな洗面台は水垢などなく、ピカピカに磨かれている。
先ほどの部屋もそうだったが、男の一人所帯だというのにとても綺麗にしている。彼女に掃除してもらっているのだろうか。
「あれ? いつもフラれてばかりとか昨日言ってた気がする」
仕事に夢中でデートもできない、そんな話をしていたことをうっすらと思い出した。
「なら、家政婦さんでも雇ってるのかな……」
小声でブツブツ呟きながら、琴莉は顔を洗ってグシャグシャだった髪を申し訳程度に整える。まさに今起きましたといった状態で外に出て行こうとしていたことに、今更ながら呆れてしまった。
部屋に戻ると、隼人が万全の準備をして琴莉を待ち構えていた。ギョッとして立ち竦むと、隼人は強引に琴莉をドレッサーの前に連れてきて椅子に座らせる。
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