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肝試し
今日は、由梨(ゆり)と肝試しの日。
と言う名の修行の日。
由梨は祖父母が寺の人。
私、美羽(みう)は神社の娘。
「お化けが怖いようじゃ困るから二人で行ってこい」
お互いの祖父母が仲が良いため、怪しい祠へ真っ暗になる23時に行くよう言われた。
私も由梨も、どっちかというとお化けは平気なタイプなのだが、その祠は色々謂れがあるので一度行ってこいということだった。
正直、めちゃくちゃ面倒くさい。
そこは墓地に囲まれた山の麓で、周りが木々とか田んぼとか住宅がほとんどないし虫も多いし最悪な場所。
雰囲気はめっちゃあるけど、そんなわざわざ行きたいとは思えない場所。
でも、私たち二人はそれぞれ懐中電灯を一つずつ持って来てしまった。
勿論、言いつけを守るため、とかではなく。
「ちゃんと行ってきた証拠を持って帰ってきたらおこづかい1万円」
という言葉につられたからだ。
「1万はでかいよねぇ・・・1万は」
お互い高校1年生となれば、欲しいものも遊びたいところもいっぱいあるし、お金はいくらあっても足りない。
「おこづかい貰ったら、映画とかカラオケとか行きまくってやろう」
「うん、いこいこ」
そんなことを喋りながら、ようやく懐中電灯の光の先に、祠らしきものが置いてありそうな、古そうな屋根が見えた。
「あ、美羽。あれじゃない?なんか小屋っぽいけど・・・ん、屋根だけか」
懐中電灯の光を頼りに由梨が目を凝らす。
「ホントだ。やっとか・・・もう30分も歩いたよね?バス停から遠すぎだよ」
同じく美羽も目を凝らし、屋根らしきものを確認したら一気に疲れがどっと出てくる。
「送るのもバス停じゃなくて、祠の前まで来てくれたらいいのに」
「それじゃ修行の意味がないとか、頭が固いよね」
美羽の言葉に由梨も同調し、二人で顔を見合わせ、ため息をつく。
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