1

3/5
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「何も覚えてないなぁ」 「ええ? じゃあ、昨日の夜、あんなに燃え上がったのに?」 「燃え上がった? 燃え上がったって、いったい何を?」  僕はびっくりして復唱した。 「いっぱい愛し合ったじゃない」  女は茶目っ気を出して言った。化粧をしていなくても可愛いというか、綺麗というか、とにかくいい女だった。 「本当に愛し合ったの?」  僕はうろたえながら尋ねた。 「うそ。あなたは私に指一本触れなかった」 「そうだよな」  僕はほっと胸を撫で下ろした。大変な過ちを犯してしまうところだった。 「あなたって、うぶなの?」 「うぶ? そうかも」 「私だってほとんど経験ないけれど、あなた二枚目だし、性格もよさそうだったから、私はそのつもりで勇気を出してここまで来たのに」 「ええ? そうなの?」  女が睨むように僕を見た。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!