時代が親切心を殺す

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時代が親切心を殺す

 サイコパスは、今日見た風景をそのまま話す。  電車の中。向かい側に座る女子中学生ふたりが目に入った。  その隣には、おばあちゃん。歳は、おそらく70ぐらい。その隣にはおばあちゃんの息子らしい男性がいた。年齢は30代後半ぐらいだ。  電車が進み始めると、おばあちゃんは隣の女の子に話をかけた。  サイコパスは、何を話しているのか耳を傾けてみた。  すると……話の内容はこんな感じだった。 「お嬢ちゃん、荷物多くて大変だね」 「えっ? あ、はい」 「これには何が入っているの?」 「……習字道具です」 「あぁ、そうなんだ。習字ね。懐かしいわね。……学校はどこなんだい?」 「……××中学校です」 「あぁそうかい……」  一通りの会話がそこで終わる。  すると今度は、おばあちゃんが何かを手に持った。  その何かは、隣の息子らしき男性から手渡された何かだ。 「これ食べな」 「えっ……だ、だいじょうぶ……です」  明らかに女の子の顔が歪んだ。 「遠慮しなくていいんだよ。食べな。ほら、隣の子も」  渋々と受け取る女子中学生。その正体は、キャラメルだった。一つ一つが紙で包まれた四角いキャラメル。  それを貰った女子中学生は困惑していた。     
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