時代が親切心を殺す

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 サイコパスは、その光景に感じるものがあった。  知らない人から貰ったものを食べるなんて怖い。でも親切心でくれた食べ物を無下に扱うことは失礼だ。  どうしていいか分からない。  きっと、彼女たちはそんな思いで顔を歪ませているのだ。  そしてその後も、おばあちゃんと息子の一行が電車を降りるまで、話しかけられる状態が続いた。  しかし女の子は次第に顔を下に向けた。突っ伏した顔をバッグにうずめ、できるだけ話を振られないような状況を作り出そうと試みたようだ。  サイコパスは、行き場のない虚しさを感じた。  おばあちゃんが下りた後、ふたりの女子中学生は手に何かを持っていた。  重ねるようにして持つそれには、紙がまとわりついていた。  ――キャラメルだ。  彼女たちは、貰ったキャラメルを口にしなかったのだ。  それを大切そうに……いや、汚いものでも触るようにして、指でつまんだ。  そして彼女たちも、次の駅で降りて行った。  おそらくだが、あの親切心の塊であるキャラメルは捨てられてしまうのだろう。  家に帰った彼女たちは、父や母にこう話すのかもしれない。     
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