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その、遊佐からしてみれば少々つれない堀越が、どんなつもりでそんな問いかけをしてきたのか。
「んー、遊佐さんみたいな人を周りが放っとくわけないのはわかってるから、ヤキモチとかは全然ないけど…」
あっさりと堀越はそう言って、遊佐を少し落胆させる。
遊佐の微妙な落胆にまるで気づかない堀越は、言葉の続きを迷って、少しの間、沈黙した。
「………その、ちょっと違うかも」
言葉を選びながら、恥じらうように目を伏せる。
「女の人とのそういうのは、あんまり気にならないけど」
遊佐さんが、過去に抱いた男のことは、すごく、気になる。
小さな声で、囁くように。
そう言った堀越の頬にうっすらと血がのぼってくる。
嫉妬心を、恥じているのだ。
遊佐は、もう一度その身体を思う様蹂躙したくなる気持ちを押さえて、あまりにも可愛らしいことを言う恋人のつむじに、そっと唇を押し当てた。
「それなりの経験は積んでいるけれど、さすがに男を抱いた経験は、君に出逢うまでなかったよ」
当たり前のように今君とこうしているけれど。
先天的にジェンダーレスだったり恋愛対象が同性だったりしなければ、なかなか同性と関係を持つ経験はしないんじゃないかな?
遊佐の答えに、つと堀越が顔を上げる。
何か、納得のいかなそうな顔だ。
「……遊佐さん、だって、初めてのときから、全然アタフタしたところなかったし」
初めてのときは絶対少しは痛いって思ってたのに、そんなこともなかったし。
「そうだな…まあ、多少の予習はしたけどね…」
あまりネタをばらすと、君が好きだと言ってくれる優雅で完璧な私のイメージが崩れるから、そこは深くは聞かないでおいて?
「後はただ、君を気持ちよくさせてあげたいという努力の賜物ということにしておいてくれないか?」
そう言って、遊佐は、堀越のまだ何か言いたげな唇を、自分の唇で甘く塞いだ。
そのまま、もう一度堀越を快楽の渦の中に引きずり込んで、全てを煙に巻いてしまう。
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